機関の設計というと難しいもののように聞こえるかもしれませんが、株主総会や取締役会については、発起人が決めていいものとなっています。したがって、もちろん幾つかの条件も定められていますが、どのような機関を設置する課に就いては、会社を設立しようとしているあなたの裁量に任されているといえます。
以下では、営利事業で使われることの多い株式会社と合同会社の機関の設計について解説します。
株式会社の機関の設計
株主総会
まずは株式会社の機関設計から解説します。最初に、株式会社を設立するにあたっては株主総会は必ず設置されなければなりません。会社法295条から328条で定められており、法的にも設置が求められています。
一般に、株主総会は株式会社の最高意思決定機関とされており、株主たる出資者が経営者から事業運営の状況の説明を受けたりする機会としても利用されます。図式的に言えば、会社の所有している株主が、会社の運営者でもある取締役ら経営陣より上位のレベルで事業の方針などについて決定することになります。ただ、特に中小企業では株主と経営者が同じ場合も想定されており、これから設立しようとする会社がその形であれば、とりわけ気にする必要はないとも言えます。
取締役
次は、取締役ですが、こちらも会社法によって設置しなければならないと規定されています。株式会社の経営にあたる(法律的には「業務を執行する」)人々を一般に取締役と言いますが、取締役については、その人数も設立時に決めることができます。取締役を置かないという設計はできませんが、極端に言えば、取締役は一人でもいいのです。ただ、以下でさらに説明しますが、取締役会を置く場合には取締役を3人は置かなければならないと決められています。
加えて解説すれば、会社の責任者は「社長」と広く呼ばれていますが、多くの場合は社長とは代表取締役のことを指しています。昨今では、こうした取締役の役職や社長という言い方と併せて、CEO(Chief Exective Officer: 最高経営責任者)やCOO(Chief Operation Officer: 最高執行責任者)といった役職もありますが、設計しておかなければならない機関ではなく、あくまで一般的な役職の名称に留まります。
これら業務を執り行う役職に誰を任命するかということが機関の設計でも決める必要があります。
取締役会
さきほど少し触れた取締役会はどうでしょうか。株式会社において取締役会は、さきほど説明した取締役から成る、経営上の重要な意思決定を行う機関です。具体的には業務執行における意思決定や、代表取締役の選出などが行われます。
さてここで、必ず設置される株主総会を除いた機関設計のパターンにどのようなものがあるのか見てみましょう。特に中小企業の場合には、具体的には以下のような機関の設計パターンが考えられます。
非公開会社で中小会社
・取締役 + 会計参与
・取締役 + 監査役
・取締役 + 監査役 + 会計参与
・取締役 + 監査役 + 会計参与 + 会計監査人
・取締役会(複数名の取締役:以下同じ) + 会計参与
・取締役会 + 監査役
・取締役会 + 監査役 + 会計参与
・取締役会 + 監査役 + 会計監査人
・取締役会 + 監査役 + 会計参与 + 会計監査人
・取締役会 + 監査役会 + 会計参与
・取締役会 + 監査役会 + 会計監査人
・取締役会 + 三委員会 + 会計参与 + 会計監査人
概ねこれらのような機関の設計が考えられますが、株式会社の機関については、柔軟に設計が行えるようになっています。ご自身の経営スタイルや事業内容に合った機関を設計してください。
合同会社の機関の設計
一方、合同会社の機関の設計は、上で解説した株式会社の機関設計とは異なります。株式会社では株主総会と取締役会、監査人の有無などが機関の設計として重要でしたが、合同会社では社員(出資者)全員に代表権と業務執行権があります。また、合同会社には「取締役」や「監査役」といった役職は存在しません。
したがって、合同会社(LLC)の機関としては、社員総会、代表社員、業務執行社員などの設定ということになります。それぞれの立場に与える権限の程度によって、組織運営も大きく変わってきます。以下で、それぞれの要素について詳しく解説してみます。
合同会社の代表
まずは合同会社の代表についてです。基本的な考え方として、合同会社の社員(出資者)全員が会社の代表権と業務執行を持ち、それぞれの社員が、株式会社で言うところの代表取締役のような立場にあります。すなわち、各社員が勝手に、自身の名前で契約を締結することもできたり、取引先が「誰が代表者なのか?」と混乱に陥ったりすることもあり得るということです。
業務執行社員
もちろんそれでは、秩序のある経営が行われない可能性もあります。そこで合同会社の機関の設計としては、定款で代表社員を定めることができます。同様に実際に業務を執り行う社員を制限するために業務執行社員(経営に参画する社員)を定款で定めることもできます。
合同会社での意思決定
また、合同会社では意思決定については、特に定めがなければ、社員、あるいは業務執行社員の過半数の同意で決めることになります。ですので、どの社員が会社の代表権を持つのか、どの社員が経営に参画するのかということを事前に決めておくことが大切だといえます。補足すれば、合同会社の意思決定の方法について、事前に「多数決」で決めるなどと定めることもできます。
こうした点を見ると、合同会社では代表権を持つ社員や、経営にあたる社員、さらには意思決定の方法といった点について、株式会社に比べて、非常に柔軟に設計できることがうかがえます。
まとめ
以上で見てきたように、株式会社、合同会社の機関の設計は、会社経営の意思決定に直接影響を与える重要なものであるといえます。これらの要素を十分に勘案し、円滑な事業経営が行えるように、納得のいく機関の設計を行ってください。